2016年09月12日

血は赤く温かかった・・・

ヒロシに携帯の記録を見られたことを知らない裕美子は
相変わらず時々ヒロシの家にやってきては口喧嘩をし
喧嘩してもその後抱かれて帰って行ったそうだ。

そんなある日
ソファーに座っているヒロシの横に座った裕美子・・・

部屋が暗いと、カーテンを開けたあと
ソファーに膝立ちになってヒロシににじみ寄ってきて
ヒロシに抱き着こうとしたのだが
肩に手が触れた瞬間、その動きが止まり顔がみるみる青ざめていった。

なぜなら、いつもの癖がそこで出てしまったからだ。

裕美子は、「ヒロシさん・・・」ではなく
「よっちゃ〜ん・・・」と、義則の名前を呼んでしまったのだった。

「ハア〜・・・!」
と、ヒロシは予期せぬ言葉に頭が真っ白になった。

見上げると、裕美子はヒロシの肩の方に手を伸ばしたまま
顏は引き攣り言葉をなくしていた。

ヒロシはパソコン前の椅子に座り直し裕美子を見た。
腹煮えくり返り、激怒したヒロシは何を言ったか覚えていないが
怒りまくって相当怒鳴ったということだった。

覚えていた言葉は
「俺はよっちゃんではない!いつもそんな風に社長に抱き着いていたんか!?」
という一言・・・

裕美子は、そんなことはないとしどろもどろで何かを語ったということだったが
そんな嘘がもはやヒロシに通用するはずがなかった。

そして、そこで初めて携帯メールのことを口にし
その記録を裕美子に突き付けたのだった。

印刷された記録を読んだ裕美子の顔は怒りに変っていた。

「これどうしたのよ?」

「お前がこの前、ベッドで昼寝しているときに
 お前の携帯から俺の携帯へデータを移し替えたんだ!
 それでもシラを切るか!?」

裕美子はもう何も言えなくなり
携帯記録を手に、黙って家を出ていったのだった。

丁度その時期、ヒロシが活動するボランティア団体が
春の叙勲で褒状を頂いたことから、祝賀会を開催するということで
その準備の真っただ中だった。

団体の地区を束ねる会長から祝ってもらう当人のヒロシに
「準備は君の方で仕切りなさい・・・」
と指示され、祝ってもらうべき人間が
開催したくもない祝賀会の調整をしなければならないのか
不愉快な思いをしつつ準備に追われていたのだった。

独りで数百人の相手に案内状を出し
独りで集計や問い合わせに対応していた中
出席のことで関係機関の間にいざこざが起き
その調整でさらに頭を痛めていたヒロシだった。

「何で祝ってもらう俺がこんな調整をしなければいけないのか?
 何で俺がこいつらから文句言われなくてはいけないのか?
 いい加減にしてくれえ!!・・・」

と、怒り心頭の中で起きた裕美子とのすったもんだ・・・
本来なら、こんな時こそ怒りを収めるために
安らぎをくれなくてはいけない女のはずなのだが
火に油を注ぐようなことをしでかした裕美子だったのだ。

ヒロシの精神状態は最悪のものとなっていた。

この後の数日間、何をしていたのかわからないというヒロシ・・・

覚えているのは、父親の初盆だけはちゃんとやらなくては
と、自分に言い聞かせていたということだったが
それをすることなく、ヒロシはお盆の間中
昼も夜も、ずっと酒を飲んでいたということだった。

浴びるほど酒を飲んでいるにも関わらず
気持ちよく酔うこともできず、話す相手もなく
ただただひたすらに酒を飲み続けた。

そしてお盆が明けたその日の午後・・・
まだまだ飲み続けていたヒロシは一大決心をした。

ヒロシはボランティア団体の正装である上下白の礼服に着替え
グラスについだ酒を、これで最後だ!と一気に飲み干すと
ベッドに正座し上着のボタンをゆっくりと外した。

白い布にまかれた包丁を右手に持ち左手を添え
切っ先を左わき腹に当て、大きく息を吸い込んで力を入れた。

あふれ出た血は真っ赤で温かかった・・・
みるみる制服は血に染まりベッドに流れ始めた。

あれだけ酒を飲んだヒロシだったが
この時のことは鮮明に覚えていると言った。

痛みは全くなく、
「血ってホントに綺麗な真っ赤やな・・・温かいな・・・」
と思ったということだ。

ヒロシの記憶はここで途絶えたのだが
娘や裕美子から後で聞かされた話では
裕美子へ電話してタバコを買って来てくれと言ったという。

裕美子と義則のメールに「タバコ・・・タバコと」とあったせいなのか
自分にも買って来てほしいと思ったのだろう・・・

また、次女には腹を刺したこと、大量の血が出ていることを告げ
一言謝って電話が切れたということだった。

次女はパニクッて長女に電話し「救急車を呼ばなくては・・・」
と言うと、長女は
「呼ばなくていい。逝かせてあげなさい。
 これでもう父さんも悩まなくて済むよ・・・」
と返事したということだった。

2階の寝室で腹を刺したのだが、発見されたのは1階の階段下だった。

吹きだした血の跡は、ベッドに始まり廊下、階段、1階の畳の間
お仏壇の前は血溜まりになっていたということだ。

第一発見者は・・・裕美子。

タバコを買って来たのだ。
電話の様子が変だったから急いで買ってきたという。

裕美子はもちろんのこと、娘たちも警察に呼ばれ事情聴取を受けた。

ヒロシの家では警察犬も入り、照らされたライトの中
夜遅くまで現場検証が行われたということだった。

その頃、ヒロシは救急車で搬送され
緊急手術のお蔭で一命を取り留めたのだった。

この事件は、祝賀会のことで関係機関の板挟みにあい
ずっと悩まされている中で起きた
「よっちゃ〜ん・・・」
が原因の、裕美子との喧嘩が引き金になったのだろうと思う。

その時のことをヒロシはこう語った。

「7月にあいつのメール履歴を見たときに愛情は消えた。
 だけど、自分もそうだが、お金に苦労しているあいつを見ていると
 何とかしてあげたい・・・という煩悩までは切ることができなかった。
 しかし、よっちゃ〜ん・・・と、抱き着かれようとしたことで
 これまでの我慢は何だったのかと、力が抜けた・・・
 祝賀会のこともいい加減頭にきていたから、もうこれで善しとしよう。
 何もかも終わらせよう。そう思った・・・」

と・・・。

一命を取り留めたヒロシは、
退院後何事もなかったかのようにその祝賀会に出席した。
複雑な気持ちを抑え、傷の痛みを我慢しながら笑顔で出席者と応対したヒロシ。

その祝賀会の総合司会者は・・・由美子だった・・・

祝賀会出かけ間際に撮影された写真。
この白い上着はヒロシが買ってあげたそうだ・・・
DSC_0324.jpg



 過去掲載一覧 



 第1話  残してはいけない携帯の不倫メール履歴  
 第2話  お土産の蒲鉾  
 第3話  初めてのベッドイン  
 第4話  男心を操る女     
 第5話  裕美子と社長とヒロシのトライアングル初対面  
 第6話  恋は盲目       
 第7話  クリスマスプレゼントは指輪が欲しい・・・  
 第8話  白いイチゴ      
 第9話  恋は盲目が冷静な判断を狂わせ始めた  
 第10話 鹿児島にいても沖縄にいても遠い心に変わりなく・・・  
 第11話 まるで夫婦気取り   
 第12話 お金返せ!!に、あたふた裕美子・・・  
 第13話 家族を裏切り、朝からセックスに興じる2人  
 第14話 煩悩が途切れ途切れのヒロシ  
 第15話 松田聖子コンサートの夜  
 第16話 女房気取り      
 第17話 お友達、癌だから鰻を御馳走したの!  
 第18話 商品1本で2000円の収入  
 第19話 愛情が遠退き始めたヒロシ
 第20話 遂に暴かれた裕美子と社長の不倫関係
 第21話 血は赤く温かかった・・・
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posted by hiroshi at 19:58| Comment(0) | PTA会長夫人の不倫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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